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2022.6.3ドローン事業

ドローンを使った風力発電点検とは?水陸両用機の実用化と5つのメリット

ドローン 風力発電点検

日本政府は2050年までに、温室効果ガスの排出量を抑える為の脱炭素社会を目指しています。温室効果ガスの排出量と、除去量を差し引いた合計をゼロにするカーボンニュートラルを叶える環境保全事業を行っています。

その中の一つが、風力発電システムの導入です。風力発電設備は、陸上・洋上の2つのタイプが設置されていて、自然の風が吹いていれば発電でき、CO2や有害物質は排出しません。長く使い続けていく為には、定期的なメンテナンスが欠かせませんが作業員の手による人力だけでは限界があります。

そこで今、効率的かつ安全に作業できるドローンを使った風力発電点検が注目されています。この記事では、ドローンを使った風力発電点検の内容や、点検時における最新式の機体情報などをご紹介していきます。

ドローンを使った風力発電点検とは?

ドローン 風力発電点検

様々な資源を海外輸入に頼り切っている日本ですが、電力供給は自国でまかなっています。風力発電システムは電力供給手段の一つに過ぎず、他にも「原子力発電設備・火力発電設備・水力発電設備」などがあります。

その中でも現状、最も環境に優しいクリーンなエネルギーのひとつが風力発電です。他の発電設備では、設置スペースをかなり必要としますし、作業員を配置しなければいけません。風力発電設備は、地面に棒状の柱を埋めて地上数十メートルの高さにプロペラを取り付ければ、風が吹いたら自動的に発電する事ができます。設置スペースもあまり必要とせず、作業員も要りません。再生可能エネルギー発電である風力発電を、長く安全に使い続けていく為には定期的なメンテナンスが必要です。

風力発電設備のブレード点検は、作業員の手による人力で行われていますが、特殊な高所作業ですので資格を所持した人員でなければいけません。作業員の確保や、人件費・安全面などにも課題がありました。そこで、より安全に効率良く点検・修繕ができる、ドローンを使った風力発電点検が普及してきています。

陸上風力発電設備の点検方法

高くて見晴らしのよい土地や、海岸沿いなど風が強く吹く場所に建設される発電所が「陸上風力発電設備」です。陸上風力発電設備の寿命は、約20年間位だと言われています。

ドローンを使う時は、ブレードの回転を停止させた状態で点検を行います。ブレード一枚一枚を、色々な角度から網羅的に撮影するので、1基当たりの撮影枚数が200枚~300枚位です。その後、ドローンを回収し撮影した写真を作業員が細かく確認しながら、破損箇所や不具合が無いか詳しく調査します。

洋上風力発電設備の点検方法

広大な海を利用し、陸地から数km〜数十kmほど離れた沖合いに建設される発電所が「洋上風力発電設備」です。点検方法は、ドローンを船に乗せて洋上風力発電設備の付近まで移動し、ブレードの回転を停止させた状態で、ドローンを飛行させて200枚〜300枚程の画像を撮影します。

その後、ドローンを回収し撮影した画像を作業員が細かくチェックしながら、破損箇所や不具合が無いか詳しく調査します。2009年9月には、JパワーとKDDIが共同でドローンを使った風力発電設備の点検効率化を目指し、実証実験が行われました。

オートフライトソフトを搭載したドローンを使い、風力発電設備のブレードに沿って自動撮影する事で、点検の品質を保ちながら作業時間の短縮に成功しています。

ドローンを使った風力発電設備点検の役割

風力発電で供給する電力量は、原子力発電や火力発電に比べると少ないです。しかし、環境に優しい再生可能エネルギー発電ですから、地球温暖化防止に繋がり安全性も他の発電方法よりも高いので普及してきています。

再生可能エネルギーの安定的な利用を目指すならば、ブレードの劣化具合や損傷の早期発見が必要になるので定期的な風力発電設備の点検が欠かせません。作業員による人力での目視点検よりも、安全かつ早く正確に調査を行えるのがドローンを使った風力発電設備点検の役割です。

ドローンと人工知能を使う最新技術を駆使した点検

従来は、ドローンを取り扱う操縦者が機体を飛行させて洋上風力発電設備・陸上風力発電設備の点検を行っていました。近年では、「ドローン☓人工知能」を融合させた、最新技術を駆使した点検方法も用いられています。

AIを搭載した機体は、専用ユーザーインターフェースにより、飛行経路を設定する事ができます。風力発電設備の詳細サイズ・位置情報を、入力すると自動的に飛行ルートを算出する事ができるので、風力発電設備の柱やブレードに沿うように飛行する事が可能です。

ドローン☓人工知能の最新技術で、大量の点検写真データをAIによって自動化及びチェック項目のスコア化をし、点検品質を保持しつつ素早く、そして点検費用を安く抑える事ができます。

水陸両用タイプの飛行艇型ドローンが2024年から実用化に

ドローン 風力発電点検

引用:HAMADORI 3000|株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー

陸上風力発電設備点検は、日本国内でもカメラを搭載したドローンで柱やブレードの損傷を撮影する点検事業を行う会社が多数あります。ですが、洋上風力発電設備点検においては、現状、外国で極小数の実施例があるのみで、日本国内ではあまりドローンが活用されていません。

近い将来、洋上風力発電設備点検をドローンを使ってスムーズに実施できる取り組みが行われています。福島県の「スペースエンターテインメントラボラトリー社」が、水陸両用タイプの飛行艇型ドローン「HAMADORI3000」の事業化に取り組み中です。

早ければ2023年度に完成します。さらに飛行距離を伸ばした「HAMADORI6000」も、2023年の秋頃に試作機が完成し、2024年度の実用化が見込まれています。

水陸両用タイプのドローンを使った風力発電点検の5つのメリット

ドローン 風力発電点検

水陸両用タイプのドローンを使った、風力発電設備点検には5つのメリットがあります。

  1. 洋上風力発電設備の点検時間が短縮
  2. 洋上風力発電設備の点検費用が抑えられる
  3. 人件費のコストカットができる
  4. 防水性ドローンは水に濡れても壊れにくい
  5. 一台で陸上・洋上の風力発電設備点検が可能

1.洋上風力発電設備の点検時間が短縮

自動撮影ができる、自動飛行ソフトを搭載した水陸両用タイプのドローンは、従来の点検方法で陸地から沖合いの洋上風力発電設備まで船に、作業員とドローンを乗せて移動させる事はしなくて済みます。海岸付近の水上や陸地から離着陸が可能で、飛行経路を入力すると自律飛行し操縦する必要もないので点検時間が短縮できます。

2.洋上風力発電設備の点検費用が安く抑えられる

洋上風力発電設備の中で、大型の1基は約2000kwの電力を発電します。経済産業省によると、風力発電を作るための費用は約1kwあたり30万円で、ランニングコストは年間に0.6万円ほどかかると言われています。年間の維持費として、2000kWに0.6万円を掛けると1200万円程となり大型の1基を設置するだけでも膨大な費用がかかるのです。

従来のメンテナンス費用は、交換品・消耗品等を除き約300万円位必要になりますが、水陸両用タイプのドローンであれば点検費用を安く抑える事ができると言われています。

3.人件費のコストカットができる

陸上風力発電設備・洋上風力発電設備に、ドローンが活用されていますが、まだまだ作業員による人力での目視点検で確認を行っている事が多いです。「HAMADORI3000」や、「HAMADORI6000」などの水上離着陸可能な自律飛行型のドローンであれば、専用UIによる飛行ルートを設定で自動撮影してくれます。また、陸地から船で沖合いまで運ぶ必要も無くなる為、人員削減でき人件費のコストカットができます。

4.防水性ドローンは水に濡れても壊れにくい

旧型のドローンは、水への耐性がない為、雨や海水などで機体が濡れる状況下では使用する事が困難でした。水陸両用型タイプは、防水加工が施されているので防水性が高く水に濡れても壊れにくいです。

5.一台で陸上・洋上の風力発電設備点検が可能

日本国内では、海外諸国と比べてまだまだ洋上風力発電設備にドローンを活用できていない現状があります。水陸両用型のドローンは、一台で陸上・洋上の風力発電設備を点検させる事が可能になるので、機体購入費用などのコスト削減に繋がるでしょう。

まとめ

CO2などの温室効果ガスや有害物質を発生しない、クリーンなエネルギーとして風力発電が注目されています。発電所は、陸上風力発電設備・洋上風力発電設備があり安定的に電力を供給していく為には、定期的なメンテナンスが必要ですが、ドローンを使った風力発電点検で安全に短時間で調査する事が可能になっています。