News

新着情報

2022.6.5ドローン事業

水中ドローン活用で変わる水産業の未来!5つの課題と解決策を解説

ドローン 養殖業

産業用水中ドローンの市場規模は、2022年度に29億円、2023年には38億円にものぼるとインプレス総合研究所の調査で予測されています。水産業で水中ドローン活用が始まっていますが、現状はまだまだ課題が多くあまり普及していません。

養殖業では、潜水士が海に潜って魚に給餌や健康状態の確認や、生け簀網の点検管理などを行っていますが、水中で行う作業中の事故の危険性もあります。作業の機械化が進めば、潜水士のリスクを減らし命を守る事に繋がるのです。この記事では、水中ドローン活用で日本の水産業がどのような未来になって行くのかや、現状の課題と解決策をご紹介していきます。

水中ドローンの基礎知識

ドローン 養殖業

水中ドローンは、海底調査・水中生物の生態研究などで1960年代から使われてきました。歴史は古いですが、日本の水産業に導入されるようになったのは数年ほど前からです。水中ドローンと言う呼び名も最近認知され始めたばかりで、元来は「水中無人探索機ROV(Remotely operated vehicle)」と呼ばれていました。

水中ドローンとは?

水中ドローンは陸地からプロポを操縦者が操作し、機体を水の中に沈めて自由に画像・映像を撮影できる小型の無人潜水機の事です。水中では電波が到達しにくい為、多くの機種がケーブルで繋がっています。

水中ドローンのタイプは、以下の2種類が水産業で実働しています。

  1. 有線水中ドローン(ケーブルで繋がっているROV機)
  2. 無線水中ドローン(ワイヤレス化されたAUV機)

どちらも高性能可視カメラを搭載し、水深0m〜30m位の浅瀬の撮影や船底の点検に使用されたり、水産業・養殖業などで使われています。また、水深100m〜300m潜水ができる水中ドローンもあり、深海の水中撮影・海底調査などにも使用されるなど、用途は多岐に渡ります。

水中ドローンの役割

水中ドローンの役割は2つあります。

  1. 人間の目の代わりに機体の可視カメラで、水中画像・映像を撮影できリアルタイムで目視調査できる
  2. 人間の手としての役割があり、アーム・マニピュレータ等を装備して海水や堆積物などの採取、水中生物の捕獲ができる

水中ドローンを水産業で使った活用事例

水産業では、水中ドローンを活用していますが現状の課題が多いので、潜水士が直接海に潜って作業にあたったり、水中ドローンとの協業で使われています。

【水中ドローンを水産業で使った活用事例】

  1. 魚の養殖業
  2. 貝や海苔などの養殖業
  3. 海の生物調査
  4. 漁業関係での活用
  5. 船舶の点検
  6. 生け簀網や定置網の点検

水中ドローン活用で水産業の未来はどう変わるのか

ドローン 養殖業

日本の第1次産業の中でIT化が進んでいる農業とは違い、水産業はオートメーション化が進んでいません。少子高齢化社会になっているので、養殖業を営んでいる人は高齢者が多く若い人のなり手が少ないのが現状です。海の仕事は体力がとても必要になりますし、危険を伴うので人間の手による人力で行っていくのは限界があります。水産業に携わる人は、30年前は約25万人程居ましたが今では約15万人にまで減少しています。

60歳以上の人が約半数を占めているので、水産業の関係者の数は今後も減っていく事が見込まれています。そういった危機感から、水中ドローン活用にあたって知識・技術を習得し、きちんと操縦できる若者を育てたり、ドローンを取り扱う企業に仕事を請け負って貰うなど少しずつ進歩している状況です。

水中ドローンを水産業に活用で重大な5つの課題と解決策

水中ドローンを水産業に活用する事で、重大な5つの課題があります。

  1. 水中ドローン活用と潜水士の協業の課題
  2. 養殖業で新たな魚種への給餌自動化の課題
  3. リモート操作できるアーム等の付属技術の課題
  4. 有線水中ドローンの活動範囲の課題
  5. 無線水中ドローンの駆動時間・通信距離の課題

1.水中ドローン活用と潜水士の協業の課題

水産業に水中ドローン活用で、潜水士の作業負担を減らしたり効率化を図る事ができますが、「全ての作業を任せられない」・「仕事を奪われる」・「潜水中に水中ドローンが一緒に潜航してくるのは恐怖」と言った不安な意見も出ています。

解決策

水中ドローン活用には、課題が多いので潜水士の全ての作業を機械化する事はまだ無理です。ですので、今すぐに仕事を奪われてしまう事態にはなりません。水中ドローンでできることにはまだ限界があります。水中作業をする為には潜水士の活躍が必要不可欠なので、共同作業をしながら上手く協業できる関わり方を模索していく必要があります。

2.養殖業で新たな魚種への給餌自動化の課題

養殖業では、生け簀網や定置網の点検であったり、魚達の健康状態の確認などを水中ドローンで行っています。そして、マグロの養殖場で水中ドローンを使った給餌作業を実施しているケースが多いですが、その他の魚種では水中ドローンで餌を与える事の実現が難しく給餌自動化に課題があります。

解決策

2020年1月から、自動給餌機「Robofeeder」というサービスが開始されています。魚達の給餌作業や、給餌機の操作を陸地から遠隔操作できるというものです。水中ドローンに、AI機能を付加する事で新たな魚種への自動給餌や、給餌効率の向上及び給餌作業の省力化が実現可能だと言われています。

3.リモート操作できるアーム等の付属技術の課題

水産業で水中ドローンが活用されていますが、現状は画像・映像の撮影が主な使用用途です。その他には、リモート操作できるアームや付属部品を水中ドローンに装着して、死魚を掴み回収する作業や海中生物の捕獲、海中調査などが行われています。

しかし、アームによっては、サイズ的には大丈夫でも魚の鱗やぬめりで滑って掴めなかったり、遠隔操作できるアーム等の付属技術の進歩状況に課題があります。

解決策

水中ドローンのアームの掴む箇所を、ギザギザに改良したり滑り止めになるものを取り付ける事で、魚を掴みやすくなると水産業に携わる人達からの意見が出ていて、研究開発が進められています。

4.有線水中ドローンの活動範囲の課題

多くの水中ドローンは、プロポと機体をケーブルで繋がないと操縦する事ができません。ケーブルの長さは一般的に40m〜100m位のものが多いです。有線水中ドローンの活動範囲は、ケーブルの長さの分が限界という課題があります。

解決策

深く潜る必要がある場合は、予めケーブルの長さを200mのものに付け替えて、水中ドローンを潜水させるなどの対策が必要です。また、無線水中ドローンを用いれば活動範囲が限定的では無くなり、広い範囲を移動する事ができます。

5.無線水中ドローンの駆動時間・通信速度の課題

無線水中ドローンは有線水中ドローンよりも活動範囲が広がりますが、バッテリーを搭載するので駆動時間の課題があります。無線水中ドローンの通信手段は主に音響通信が使われています。通信速度が数10kbpsほどとテキストデータは送れても、映像などの大容量データを送受信が難しいです。

解決策

長時間、水中ドローンを駆動できるようにバッテリーの容量増大や高性能な材質を用いるなど、メーカーが改良に試行錯誤を重ねています。島津製作所が2022年に音響通信と比較して1000倍速い通信速度の、水中光高速無線通信装置「MC100」を発売中です。

通信距離は理論上300mでも可能なので、将来、高速水中Wi-Fiが水中ドローンに搭載され、普及していく事を期待されています。

まとめ

ドローン 養殖業

日本の水産業の仕事は、昔から潜水士が海に潜って「船舶の点検・魚の健康状態の確認や給餌作業・生け簀網や定置網などの点検管理」などを行っています。重労働で常に危険を伴う仕事です。水中ドローンの活用で、潜水士の肉体的な負担を軽減や人的被害を減らす事ができますが、課題が多いので水産業ではあまり普及していません。

参考:【藤川理絵の水中ドローン最前線】vol.9 養殖業での事例|ドローンジャーナル