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2022.6.4ドローン事業

ドローンを使った高圧送電線点検|深刻な5つの課題と解決策について

ドローン 高圧送電線点検

 

従来は、高圧送電線点検をヘリコプターや作業員が高倍率スコープなどを用いて行っていました。今後、少子高齢社会となって行く日本の現状において、作業員の確保が難しくなったり高齢化などにより、点検作業を人力だけで実施していく事が困難になっていきます。

そこで、ドローンを使った高圧送電線点検が注目されています。ドローンを活用する事で、昇塔作業が無くなり作業員の肉体的な負担を減らすことができたり、点検道具や資材機を所持して山中に入る必要が無くなるからです。

しかし、ドローンを高圧送電線点検で利用するには課題があります。この記事では、ドローンを使った高圧送電線点検の深刻な5つの課題と解決策などをご紹介していきます。

ドローンを使った高圧送電線点検とは?

現状の高圧送電線点検へのドローンの使われ方は、地上から作業員がプロポと呼ばれる操縦リモコンを操作し、鉄塔・送電線などにドローンを飛行させて点検箇所を撮影します。カメラから得られた画像や映像を元に、作業員が安全なのか修繕が必要な状況なのかを確認するのです。

ドローンには、非自律立飛行タイプ・自律飛行タイプと2種類の機体があります。

  1. 非自律飛行型ドローン=作業員が操縦する必要がある
  2. 自律飛行型ドローン=専用UIによる飛行ルートを設定で自動飛行する

非自律飛行タイプは、高圧送電線点検の時に作業員の昇塔作業が無くなりますが、ドローンを作業エリアまで運ぶので作業員の体力が必要とされます。自律飛行型タイプは、飛行ルートを設定するとドローンがGPSを感知しながらコンパスを作動し自動飛行するので、作業員の肉体的な負担を無くす事ができます。

ドローンを使った高圧送電線点検の役割

ドローン 高圧送電線点検

引用:平成 30 年度新エネルギー等の保安規制⾼度化事業報告書|経済産業省

鉄塔・高圧送電線などは、山奥に建設されているものが多いので作業員が現場まで行くのに、重い点検道具を持ちながら、舗装されている道路が無い険しい所を進まなくてはいけません。移動中に山中から滑落したり高圧送電線が付いている鉄塔を昇っている時に転落するなどの危険性があります。

高圧送電線の保守点検業務は、若い人が少なく昔から点検作業をしていて熟練した技術を持った作業員が多いです。体力的に衰えが出る年配の作業員には、過酷な重労働です。

その点、ドローンを使った高圧送電線点検は、作業員が危険な山中に入り現場まで行かなくて済みますし、昇塔作業も無くなります。ドローンを活用する事で、安全性も高まり作業負担も減るという役割があるのです。

現在、高圧送電線点検時にドローンを使って画像撮影をして、劣化具合や損傷部分の確認などの保守点検作業が普及してきています。また、「鉄塔管理スマート化実証」という取り組みが実施されています。鉄塔に風圧等の無線センサーを設置して、遠隔監視ができるというものです。鉄塔管理スマート化実証により、風圧・塩害などによる危険度をリアルタイムで確認や予測できます。

高圧送電線点検にドローンを用いる事への5つの課題と解決策

ドローン 高圧送電線点検

高圧送電線点検に、ドローンを用いる事は現状において多くのメリットがありますが、深刻な5つの課題があります。

  1. 制度的な課題
  2. 技術的な課題
  3. 積載可能重量の課題
  4. 高圧送電線から生じる電磁波で機体の自動制御が不安定に
  5. 天候不良や自然災害の時は飛行不可で点検できない

1.制度的な課題

ドローンを高圧送電線点検に活用しだしたのは最近の事です。点検事業者が独断で実施できるのではなく、「ドローンの飛行に関する許可・承認の審査要領」に当てはまる必要があります。そのうえで、国土交通省航空局が運営するドローン情報基盤システムへの申請などが必要になります。

全ての作業員が、「登録・申請」の手続きの手順を把握しているわけではありません。ですので、もっと社内でドローンの知識に関しての情報共有をし、効率化を目指す必要があるという制度的な課題があります。

解決策

高圧送電線点検に、ドローンを活用する点検事業者は手続きや点検作業で得た知識を、現場の作業員達だけではなく社内の人達とも情報共有する事が大切です。社内でノウハウが情報共有される体制を構築する事によって、より効率的に作業が進み、安全面の強化に繋がりトラブルが起きるリスクを減らす事ができます。

2.技術的な課題

高圧送電線の総延長は、全国で14万km程あると言われています。電力設備の維持管理の為に、各点検事業者は1機のドローンだけで点検していては効率良く調査できません。また、ドローンで取得した画像・動画などから異常を自動検知する技術的な課題があります。

解決策

1機のドローンだけではなく、複数の機体を使うなどして効率的な運用が必要です。ドローンの機種によって、「航続距離・飛行時間」に違いがあるのでバッテリー式だけではなく、エンジン式・ハイブリッド式・燃料電池式などの駆動方法を用いて高圧送電線の点検時間を長くできるようにする事が大切です。

3.積載可能重量の課題

高圧送電線設備は、道路付近や山中に建てられています。地震や台風などの自然災害時に、山の木々が倒れていたり地面が割れ道路が寸断されている恐れもあります。そのような状況では、車両や作業員の移動が困難になるので、ドローンを使って点検道具・資機材などを運搬できるようにする為、製造メーカーが研究開発中です。今のドローンでは、重い荷物を運べないので積載可能重量の課題があります。

解決策

ドローンの製造メーカーが、積載可能重量の引き上げを試行錯誤しながら研究開発を重ねているので、将来は重い資機材の運搬ができるようになる可能性があります。また、重量6kg程の高圧送電線点検ロボットが開発されており、ドローンのプロペラを利用して、ロボット自体が自力飛行します。作業員は絶縁棒で、高圧送電線の上に誘導するだけでよくなる為、安全かつ簡単にロボットを設置でき点検作業を自動化が可能です。

4.高圧送電線から生じる電磁波で機体の自動制御が不安定に

高圧送電線は、何万ボルトもの電気が通っているのでドローンが送電線の付近に来ると、電線から生じる電磁波の影響でGPS機能やコンパスが狂ってしまう恐れがあります。ですので、機体の自動制御が不安定になってしまうのです。

解決策

高圧送電線と、ドローンの距離を近すぎず遠すぎず、常に一定の間隔を保ちながら自動飛行するようにしなければいけません。送電線とドローンの距離を常に一定に保ち、自動飛行するノウハウが必要です。

5.天候不良や自然災害の時は飛行不可で点検できない

ドローンは、精密機械ですので雨に濡れてしまうと、電子基板がショートして壊れる恐れがあります。また、台風などの自然災害では強風が吹き、ドローンが風に煽られると飛行が困難です。天候不良や自然災害の時は、高圧送電線点検ができないといった課題があります。

解決策

ドローンを、雨の時や雨になりそうな場合は飛行させないようにしたり、風速5m/s以上の状態では飛ばさないようにする必要があります。2016年から、強風下や天候の完全回復を待たずにドローンを問題無く飛行させる「革新的河川管理プロジェクト」が進行中です。

その中で、「アミューズワンセルフ・ミライト・テクノロジーズ」は、全天候型ドローン等の開発に着手して現場実証が行われているので、近い将来、風速20m/位の強風下でも自律飛行できる可能性があります。

まとめ

ドローン 高圧送電線点検

高圧送電線が通る鉄塔は、道路付近や山中に建設されています。山中に建てられているものは、作業員が道なき道を危険を覚悟しながら進み、現場まで辿り着かなければいけません。

高圧送電線点検は、高所作業になるので作業員は転落や感電の危険性が高まりますから、より安全で効率的な点検が行えるドローンを使った点検事業者も増えてきました。

ただし、まだまだ課題はあります。課題の解決に向けて、製造メーカーがドローンの改良や点検事業者は現場の作業員達だけではなく、社内の人達とも連携を取りノウハウの構築・共有などに取り組んでいます。

参考:電線の劣化診断”を効率化するドローンのプロペラを搭載した軽量点検ロボット|BUILT

   送電線に沿ってドローンが自動飛行・撮影する「送電線点検用ドローン自動飛行システム」の開発・導入について|TEPCO